このところ、色々と問題の多いかんぽ生命ですが、営業の再開に向けてお詫び行脚の最中のようです。
「すべてはお客さまのために」とのスローガンを打ち出して、これまでとは違う、生まれ変わった、とアピールに必死です。
断言しますが、かんぽ生命が「顧客本位」な組織に生まれ変わることは絶対に不可能です。
かんぽ生命が顧客本位を実現するのは構造的に不可能なのです。
まず、かんぽ生命の主力商品ですが、主に2つ。
終身保険と養老保険です。(学資保険もありますが、基本的には養老保険の亜種です。)
これどちらも仕組みは、貯蓄性保険なんです。
保険金が支払われるタイミングが死亡時か満期時かの違いだけで、基本的には貯蓄性保険です。
つまり、貯蓄と保険のセットなんですね。
資産運用の世界で、経済的合理性を考える時は、できるだけ目的別に必要に応じて必要な商品を組み合わせるのが効率が良くなるのは基本です。
貯蓄なら貯蓄
保険なら保険
貯蓄性保険であれば、貯蓄目的の部分に関しては預貯金や投資信託等、保険部分に関しては死亡時の保障が必要なら生命保険、医療保障が必要なら医療保険を使ったほうが安くすみます。
貯蓄性保険>貯蓄+掛け捨て保険
ということです。
かんぽ生命の商品を取り扱っているのは全国の郵便局です。
郵便局では、貯蓄部分に関しては貯金や投資信託の取扱があります。(投信はあまりおすすめできるようなラインナップではありませんし、ある程度の規模の郵便局でしか取り扱いすらしていませんが・・・)
保険部分に関してはかんぽ生命の商品しかなく、そのかんぽ生命には掛け捨ての保険がありません。
顧客にとって最も有利なのは貯蓄と掛け捨て保険の組み合わせであるのに、それを提案すると自社の商品は売れないことになります。
これは、はっきり言って郵便局員はたまらないでしょう。
顧客本位、つまり顧客の利益を最優先にしろということと、かんぽ生命の保険を売るという、両立不可能なことを求められるからです。
竹槍で爆撃機を落とせと言われているようなものです。(結局、精神論に頼ることになるところも旧日本軍とそっくりです。)
これでは、保険を売れ売れとプレッシャーを掛けられ、必要のないところに必要であるかのようにニーズを捏造して販売していた今までと構造的になに一つ変わっていません。
結局、取り扱っている商品も、構造的な欠陥も、構成している人間も何ひとつ変わっていないのに、一体何が変わったというのでしょう。(社長は変わりましたが、社長はいままでもコロコロ変わっていますが、会社自体に何の変化もありませんでした。)
かんぽ生命も、新商品の開発をしたいという意向はあるようですが、民間の保険会社業界の反対でそれもできないという話も耳にします。
いずれにしろ、郵便局が真の「顧客本位」を実現する金融機関となる道のりは相当に遠いものとなりそうです。
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