「リスクパリティ戦略」と聞くとなにかすごく高度で複雑な戦略であるように感じる人も多いと思いますが、考え方はそう複雑ではありません。
ここでは、わかりやすさを重視して極端に簡略化して説明します。
「リスクパリティ戦略」の簡単な例
株式と債券の、リスクプレミアムとリスクをそれぞれ次のように仮定します。
リスクプレミアムとは、リスク(変動)を受け入れることで手に入るリターンのことです。
株式 | 債券 | |
リスクプレミアム | 5.0% | 1.0% |
リスク | 15.0% | 5.0% |
一般的に株式と債券は逆相関(株式が上昇すれば債券は下落し、株式が下落すれば債券は上昇する)なので、ここではわかりやすいように完全に逆相関だと仮定します。
リスクパリティ、つまりリスクが均等になるように、株式1に対して債券3のポートフォリオを組成します。
この場合のリスクプレミアムは2.0%(5.0%×1/4+1.0%×3/4)となります。
そこで例えば、400万円の運用資金を、株式100万円+債券300万円で保有するとします。
株式が上昇するときは債券がその3倍下落し、株式が下落するときは債券がその3倍上昇しますので、完全にリスクを無くすことができました。
株式100万円 | 債券300万円 | 合計 | |
株価⬆債券⬇ | 15万円 | ▲15万円 | ±0 |
株式⬇債券⬆ | ▲15万円 | 15万円 | ±0 |
リスクを完全に除去して、2.0%のリスクプレミアムだけを抽出できました。
現実にはこのように単純ではありませんが、相関の異なるアセット(資産クラス)をリスクが均等になるように組み合わせて、リスクを減少させつつリスクプレミアムをとりにいくという考え方はご理解いただけたのではないでしょうか。
厳密には、リスクパリティ戦略で基準とされるリスクとは、リターンのブレ幅ではなく、ボラティリティ(値動きの大きさ)を均等にしようとします。
つまりボラティリティの高い局面では、株式を売却し債券比率を高めることになるので、売りが売りを呼ぶ展開となりやすく、株価の下落を加速させてしまうハーディングと呼ばれる問題点を含んでいます。
個人投資家が「リスクパリティ戦略」を利用するなら
実際に多くの機関投資家が採用している戦略で、非常に合理的なのですが、個人投資家が採用するには考慮すべき点があります。
それはコストです。
例えば、リスクパリティ戦略を採用している投資信託を購入するとしましょう。
運用管理費用(信託報酬)が年率2.0%だとしたら、どうでしょうか?
せっかくのリスクプレミアムも運用管理費用(信託報酬)でとられてしまって、投資家の手元には残りません。
現実的には、リスクも完全に取り除くことは不可能ですし、コストを上回るだけのプレミアムを手に入れることができるかもしれませんが、個人投資家がリスクパリティ戦略を謳う投資信託を購入する場合は、きちんとコストも考慮した上でリスクに見合ったリターンが見込めるのか十分に検討する必要があります。
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